コミタン!質問箱 第3回回答

数十年来、方々の書店でコミックを買っていますが、昔は新刊でも帯が無く、内容説明もカバーに載せられていないのが普通でした。その代わり、折り返し部分に同一レーベルの刊行状況が纏められていたり、新刊案内が挟み込まれていました。今でもそれを踏襲している単行本も存在しますが、単行本を通して作家名や作品名を知る機会が減ったように感じています。その間、店内の光景は、取次店の発売予定表や完全受注生産商品の申込書など、掲示物や配布物の種類や質に特段の変化があったわけでもなく、本の売り方が分からないと嘆く書店員には共感しかねます。頻繁に原画展を開いて編集部や作家宛の簡素なアンケートを実施する書店もあり、商品を売るだけではない実店舗の役割があると思うのですが、読者が気付かないところで販売手法が進化しているのであれば教えて下さい。

ご質問ありがとうございます。
「(書店の現場について)読者が気付かないところで販売手法が進化しているのであれば教えて下さい。」
という部分について私・三木の考える範囲でお答えします。
回答内容の前提として、私が現在の書店像を全体的に把握できていないためご質問者の方が想定する書店像とズレがあるかもしれないこと、また私がどこか単一の店舗について数年のスパンで具に観察をできているわけではない、ということをご容赦ください。

実書店の販売手法における総体としての進化はほぼ起きておらず、その進化に期待するのであれば相当な時間が必要となるはずです。

これは売り場を進化させるコミック担当者の被雇用状況や社内的立ち位置が大きい要因であると思われます。
・正規雇用扱いの人間が少なく勤続年数自体が短くなりがち
・担当ジャンル替えや店舗の異動が多い
・現場担当者のパート/アルバイト社員化に対して、教育と責任を付与できる経営体制不足
以上の理由で、コミック担当者に限らず書店員が売り場に進化をもたらす段階まで自身にも棚にも経験値を溜められていません。
先輩がそういう状態であれば新入社員に対してもそれ以上の技術的な継承は難しく、業界全体で見れば車輪の再発明をし続ける停滞状態にあると思います。


この記事を読んだ書店員で「本の売り方が分からない」と少しでも思う方は久禮亮太氏の著書『普通の本屋さんを続けるために』を読みましょう。これが経験値の土台になる一冊です。
一般販売はしていないので自店の店長に申し込んで恵贈本を取り寄せると良いです。

ウェブでも読むことができるようです。
http://www.asuka-g.co.jp/event/1603/007768.html

一方で以上のような諸問題を積極的に、または偶発的にクリアした環境によってを得た進化で輝いている店舗もあります。
しかしこれはその書店にとって他店に優位をつけている競争力でもあります。
またはその進化を敷衍し他店に押し広げる体制が担当者の上位機能にない、ということもあるでしょう。

お客様の目線でいえばそういった輝いている店舗をどのように探すか、いかに気づくか、となると手がかりは少なく、イケてるコミック担当者を探している私もまた困っているところです。

ご質問への回答としては「進化はない、これからも薄い」というところですが、場をお借りして書店員に向けて「進化の土台を作ろう、まずは久禮亮太氏の本を読もう」と発信したいと思います。

コミック担当者に向けては「その土台の上に一緒に城を作ろう」。
コミック担当者に絞った議論はこちらから少しずつ。


流通面では入荷速度短縮等の進化はあるんですが、これは読者の方に気づいてもらって意味のあることではなく、やはり売り場の利便性や楽しさについては担当者が工夫を持つところでしょう。

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