コミタン!質問箱 第4回回答

コミックスの書籍扱いについての質問です。入荷次第、発売日より前に店頭に並ぶ場合や、版元によってはホームページ上の発売日が出庫日であったりするなど、読者にはその区別の意味が分かりません。業界再編の結果、レーベルごとに違いが生じ、同一商圏内でも店舗により入荷状況が異なります。同時発売のイラスト集だけが書籍扱いで、発売日には売り切れていたり、他の単行本と見た目の違いが無い作品もあり、混乱します。また掲載誌自体が雑誌ではなく書籍扱いで、その理由はバックナンバーを長期間店頭に置くためだそうですが、読者、書店、流通、版元それぞれのメリットやデメリット、その役割を解説して下さい。

ご質問ありがとうございます。
私見としてお答えすると、書籍扱いと雑誌扱いというスキームは読者・書店・流通・版元の四者にとってのメリット/デメリットの調整により発生したものではなく、かつて流通上の理由により生じて経路依存的に現状があるものだと捉えていますので役割のみ解説したいと思います。

2つの扱いにおける本質的な差とは「この本をどこにどれだけ配本するという判断をどこがするか」というところだと思います。

書籍扱いはその判断を原則出版社が行います。
雑誌扱いはその判断を原則取次が行います。

出版バブルと呼ばれていたような頃、数百万部が印刷された雑誌一冊一冊の配本についてゼロベースから積み上げ算をしていては週刊誌の定期発行は成り立たなかったでしょう。書店への送り込み数を販売実績やある程度の型にはめてしまう仕組みとして雑誌扱いという枠組みが必要だったのだろう、と推測をしています。当時はPOSなどなく雑誌にはスリップもないため、個店の売上数は「配本数-返本数」で把握しており、かなりの時間がかかっていただろうと思います。

雑誌コードのことを調べていたら近しい趣旨が記述されていました。
http://www.jpo.or.jp/magcode/history/index.html

以上は雑誌の話ですが、ではコミックスがなぜ「雑誌扱い(コミックス)」という形態をとることにしたのか、これも想像するところのみです。
コミックスの売上数が雑誌と比例しそうであること、続巻を前提とした周期性があるものであり配本を型にはめれること、一冊あたりの発行部数が大きかったこと、あたりが理由ではないでしょうか。
逆に書籍扱いを選択する理由としては、刊行物に特殊性があり配本を自社の営業で決定したいこと、雑誌コードを新規に取得できなかったこと(費用面?)が挙げられると思います。

また雑誌と書籍では正味が違う、ということもあるかと思いますがこれについては詳しくないところなので論じません。

ということで、ある作品やレーベルが雑誌扱いであるのか、書籍扱いであるのか、ということは読者・書店・版元、もっといえば作品に対するメリットとデメリット以前の問題で決定されている印象があります。

一方で雑誌扱いコミックスの初版単行本部数がこれだけ小さくなっている現状、またコミックに詳しい担当者が不在状態であるような書店が増えつつあるなか雑誌扱いというスキームは少々難しくなってきていると考えています。
これからの時代は1万部の本に対して、
・売れる店
・売ってくれる店
をどれだけ見つけて配本を約束し、販売のサポートをするのかが版元の考える営業になるでしょう。
また書店は
・売れる見込数
・自店に限らない売れる施策(大数的には自店で売れる施策でよい)
に対して正確な推測を持ち版元に伝えることが重要になるでしょう。

これらについて現状容易であるのが書籍扱いですので、以降の新規レーベルは大部分が書籍扱いを選択していくのでは、という予想をしています。
サイコミも書籍扱いですね。
https://cycomi.com/news/news_detail_48.php

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