週刊、隔週、月刊、隔月、季刊などの掲載誌の違いにより単行本の発刊ペースも作品ごとに異なりますが、それらをあまり考慮せずに発注数を決めている書店があるのではないかと思う時があります。何故か、と申しますと、週刊誌に連載中のある作品の一巻だけが同時発売の作品に比べて数十冊多く積み上げられていたのに、翌月以降も余り高さに変化がなく、その作品の二巻目からは入荷しなかったからです。その作品は連載中で十巻に達しそうですが、ネット上では途中の巻の品切れの報告がしばしばあります。質問したいのは、徐々に読者が増えていそうな作品の取り扱いを書店が再開する判断の目安についてです。また、休刊した雑誌から移籍した作品や休刊と前後して完結した作品で一巻目が発売されていない場合でも画一的に売れないと判断されて入荷を見合わせていそうで、そのような作品の書店員の受け止め方についても知りたいです。同様に、数年後に二巻が発売されるような作品でも、最初の一週間の売り上げだけで単純に続刊の売れ行きを予測するのは乱暴だと思うのですが、実態はどうなのでしょうか。
ご質問ありがとうございます。回答が遅くなってしまい申し訳ございません。
いただいた問題のスコープを3点に絞ります。
①「徐々に読者が増えていそうな作品の取り扱いを書店が再開する判断の目安について」
②「休刊した雑誌から移籍した作品や休刊と前後して完結した作品で一巻目が発売されていない場合でも画一的に売れないと判断されて入荷を見合わせていそうで、そのような作品の書店員の受け止め方についても知りたいです。」
③「数年後に二巻が発売されるような作品でも、最初の一週間の売り上げだけで単純に続刊の売れ行きを予測するのは乱暴だと思うのですが、実態はどうなのでしょうか。」
まずはいずれの問題におきましても、特に続刊作品の発売日入荷数については書店員の希望よりも原則販売実績が優先される、ということを前回の回答より察していただけますと幸いです。そのため観察できる現象としてある店頭に在庫がないということと、書店員がどのように作品/商品評価をしているかということは往々にして別のレイヤーの問題で発生していることがあります。
以上を一般論として私の考える範囲で下記ご回答いたします。
①
仮にその作品の1巻は入荷をすると決め、また実際に入荷をしたものと仮定して、「取扱いの再開」を検討するタイミングは以下の2点があります。
(1)品切れ時に追加発注を行うか否か
(2)販売実績は0冊となっているが最近面白いので新刊時の入荷数に数をつけてみる
(1)
その作品を売り切りとするか、それとも今後も継続的に探されるだろうと見込むか、あるいは継続的にオススメをしていきたいか、という発注時の判断を原則そのままなぞっております。
それ以外に判断に影響するものとして「思っていたよりも短い期間で/想定していた入荷数がなくなりそう」なときは、慎重な判断が問われますがやはり再入荷や追加注文へのアクションを取るでしょう。
しかしながら発注を行っても版元・取次品切れなどの事情で入手できない、という状況も多々ございます。
(2)
徐々に読者が増えている、という現象にも程度はありますが例えば発売日以外にも「重版」となれば読者の拡がりが明らかだと推測されますので取扱い再開を検討するかもしれません。
あるいはコミタン!の一覧チェック等で他店が有効な動向を教えてくれた場合に上記「売り切り」から「取扱い再開」に傾いて発注を行うことがあります。
キーポイントは「自分が知らない情報」にあるように思います。
②
「休刊誌に載っていただから」というレッテルで作品を評価することはありません。あくまで作品がお客様にとってどうか、という視点で判断を行います。
ただ「休刊あるある」としては、打ち切りなどの事情によって作品中で丁寧に描写されるべきことがそうなされなかったために、読者の方の期待を裏切るのではないか、という感想をもつ作品が発生することがやはりあります。
③
販売実績により適正数を割り出すことは、既刊作品の版元刷り部数や書店入荷数の判断にとって最も妥当な推測であろうと考えております。
ここで問題となるのは「最初の一週間だけで」という部分ですが、私は「続刊発売時までの期間で」の数字を推測のベースに置いております。
恐らく意志を持って入荷数を決めているコミック担当者は総てそのようにしているはずです。
その上で「このマンガは自分だけが着目した作品だから1巻は先行して売れたが、2巻は近隣店舗も売るだろうから控えめな数字にしよう」とか「1巻は飛び道具的に売れると見た作品だが、継続的に読みたい作品だろうか」などの判断を加えます。
発売最初の一週間と数字、ということでいえば続刊の売れ行きではなく重版判断の話、最近では連載継続の判断なのではないかと思います。
以上です。