隣の席の女の子がめがねを忘れた。
フォローしてあげたい小村くんだけど、
見ようと一生懸命な彼女の距離が近すぎて── 。
悶えるッ・・・!!
天然っぽくも見える振る舞いは彼女の素なのか、それともめがねを忘れての油断なのか。
ず~っと見ていたくなるような二人を描いてくれた藤近小梅先生に、コミタン!チームでインタビューをさせていただきました。
――― 単行本の発売おめでとうございます!二人の距離感を縮める今作のキーアイテム「めがね」ですが、先生もめがねユーザーなのでしょうか。
ありがとうございます!実を言うと私はめがねユーザーではありません…担当さんがめがねユーザーなのでネタ出しの際にアイデアをもらったりして助けられています。
――― めがねを忘れた三重さんがぐっと距離を詰めてくるので、そのたびにドキッとしてしまう小村くん。二人のやり取りにニヤニヤが止まりません。この二人が生まれたのはどんな瞬間だったのでしょうか。
なんかラブコメ的なものが描きたい…とネタを考えていて、特にきっかけはなく(めがねを忘れて…顔を近づけてくる女子…)と浮かんできた感じですが、改めてルーツを辿るとすれば、その頃観ていた『らき☆すた』(美水かがみ/KADOKAWA)の高良みゆきさんの影響だったかもな…と思います。
――― 先生が女の子・男の子の仕草でそれぞれドキッとするのはどんなときですか。
女の子は、髪の毛を気にしたり、スカートの裾を気にしたり、身だしなみへの意識が見える仕草が好きです。ふとした瞬間に気にするのがよいです。男の子は、ちょっとガサツになる瞬間が好きです。どかっと椅子に座ったり、一瞬言葉遣いが悪くなったり。普段からガサツな男の子も好きです。
――― 小村くんから見ても、読者から見ても謎多き三重さんですが、視力が悪くなってしまった理由はあるのでしょうか。
三重さんも子供の頃テレビの子供番組とか大好きだったと思うんですけど、大好きすぎてついつい一生懸命見ちゃったんじゃないかなと思います。テレビに張り付くくらい。視力の遺伝もあると思います。かわいいものが好きな割と普通の女の子ですが、生き物図鑑とかを見るのが好きそうです。一生懸命見ます。気持ち悪めの生き物が出てくると眼鏡をかけてても細目で見ます。
――― 三重さんの裸眼視力はどのくらい・・・?
0.01くらい…?
――― ヒロインの名前の三重さんの由来が気になります(三重県の書店員より)
”みえ”る・”みえ”ないの話だからです。「めがねがなくて視界が三重(さんじゅう)になるからかなって思ってた」と言われて なるほどそういうのもあったか…と。
――― 三重さんがかけるめがねのチョイスには、先生または三重さんの好みが反映されたのでしょうか。しっかりフレーム好きです。
色んなめがねをかけさせたいとは思っているのですが、ついついしっかりフレームのものばかりかけさせてしまいます。私がゴツメガネが好きだからだと思うので、私の好みが反映されてます。三重さん的にも、しっかりフレームの方が目立つから忘れにくいかも…と思っているのかもしれません。
――― 小村くんも、三重さんと繋いだ手を洗わないこと、さらにその先を考えるなど、なかなかラブい行動を取っていて可愛い存在です。先生から見るとどんな男の子なのでしょうか。
可愛いと思っていただけて嬉しいです。小村くんは内気で、自己評価の低いところもありますが、穏やかで誠実な優しい男の子だと思います。そしてもちろん私自身かわいいと思っています。三重さんへの愛が底知れない感じがして、そこはちょっと怖いなと思います。
――― 小村くんの今のところの恋愛観はどこから得たものなのでしょうか。ムッツリというかなんというか、なかなかエッジが利いた愛の深さ・・・。
どこからでしょう…多分もともとそういう形の愛を持ってたんでしょうか…。これまでは特に恋愛とかしてこなかったイメージがあります。出てくる機会がなかった間、鋭角に研がれ続けてきた愛が三重さんにうっかり惚れたことによって突き出してきたんでしょうか…。
――― 陰影のコントラストや吹き出しでのセリフの流れなど、ハッとする画面づくりを楽しく読んでいます。何か意識をしていることはありますか。
今作は特にキャラの可愛さを楽しんでもらう作品だと思うので、コマ割りの際にキャラの表情が目立つ配置になるように意識しています。 陰影に関しては、その場所の光と影が感じられる画面が好きなので、そのあたり意識して仕上げるようにしています。
――― 先生と担当編集さんが、特に気に入っているシーン・コマがありましたら教えてください。
【藤近】Twitter版3話目(単行本第14話)の、「三重さんが、実は見えている」シーンかなと思います。もともとあれがこの漫画のオチのつもりだったのですが、それ以降もこんなに描き続けられていることに内心驚いています。
【担当】自分も同じシーンでしょうか。素直なラブコメに見えて、こういった変化球があるのも、本作の魅力だと思っています。
【担当】自分も同じシーンでしょうか。素直なラブコメに見えて、こういった変化球があるのも、本作の魅力だと思っています。
――― 担当編集さんとの打合せはどんな感じなのでしょうか。
主に電話で話してます。次どうしよっかー…という感じで電話をはじめると、担当さんが次次アイデアを出してきて悔しいので、私が先にネームを描いてきてから打ち合わせするみたいな時もあります。それはそれで直しが入りやすいので悔しくなります。でも担当さんがとっても褒め上手なので、最終的には嬉しくなります。
――― Twitterで公開されていた作品が商業連載化となるとき、媒体の違いなどで意識された部分はあるのでしょうか。
ツイッターの方では、「1つのネタを4Pでできる限り簡潔にやる」を意識して描いていました。雑誌連載の方も、1つのネタを簡潔に…の方向で行こうとしていたのですが、結局もう少しストーリーテイストのものを意識するようにしました。せっかく雑誌でページ数も多めに描けるんだし、ということで…。
好きな子がめがねを忘れた pic.twitter.com/3hgul2PKnx
— 藤近小梅@好きめが①巻2/22発売 (@hujiume) 2018年4月23日
――― 今作はTwitterに投稿した人気が雑誌連載にという経緯がありました。SNSの存在が現在のマンガ家さんにもたらしているものも様々あると思いますが、先生の活動においてはどのように感じられますか。
SNSの存在は私にとっても大きなものになっていると思います。私は、最初の連載が終わってからしばらく「(宣伝する事とかないから)ツイッターでやることが何もないなあ…」くらいに思っていたのですが、ツイッターは宣伝ができるだけでなく、そもそもの発信源になり得るということに後になって気づきました。それでも最初は(まだ連載も獲れてないのにツイッターに漫画をあげてる場合か…?)と謎の引け目を感じていたのですが、今となってはむしろツイッターでの様々なアピールは欠かせないものだと思うようになりました。とは言えもちろん時代によるところが大きいとは思うので、ツイッターがある今のうちに出来る限り私を知ってもらおうくらいのスタンスでいます。
――― 先生がマンガを描きはじめたのはいつ頃からだったのでしょうか
物心ついた頃からずっと描いてた気がします。あまり描かなくなった時期もありましたが。ありがたいことに高校在学中にデビューさせていただけて(※)、今まで漫画を描かせていただけてることを嬉しく思います。
※「週刊少年チャンピオン」(秋田書店) 2012年No.47 『花井結菜の愛のかたち』でデビュー
※「週刊少年チャンピオン」(秋田書店) 2012年No.47 『花井結菜の愛のかたち』でデビュー
――― 先生のマンガ作りに影響が大きかったと感じる作品があれば教えてください。
ラブコメなら断然『らんま1/2』(高橋留美子/小学館)です。あれはラブコメの教科書だと思ってます。特に主人公の乱馬とあかねちゃんのお互いに素直になれないところが大好きです。小村くんと三重さんはド素直なコンビですが。
――― 先生が思うラブコメの「お約束」的シーンは。
お約束…というとお風呂でバッタリとか…?となりますが今作では描かないであろう上に絶妙に古い気がします。
――― 先生のフェチなシチュエーションを教えてください
私自身、女の子が男の子を惑わせるシチュが好きで描いてます。いつも女の子に惑わされてる男子が、逆に女の子の方を惑わせる瞬間 みたいなのも好きです。あと、ラブコメにおける至高のシチュはキャラのやきもちだと思ってます。
――― いま続きの巻を楽しみにしているマンガはありますか。
少年漫画やファンタジー漫画が特に好きで、『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴/集英社)、『不滅のあなたへ』(大今良時/講談社)、『血界戦線』(内藤泰弘/集英社)は毎巻楽しみにしています。まだ既刊が少ないものだと、『北北西に曇と往け』(入江亜季/KADOKAWA)も楽しみにしてます。
――― ファンタジーが好きになった原体験の作品はあったのでしょうか。
高校生の頃に『マギ』(大高忍/小学館)を読んで、そこからファンタジーへの興味が増していった気がします。
――― 子供の頃はどんな遊びをしていたのでしょうか。
結構色んなことをして遊んでいましたが、ひとつ挙げるなら兄姉たちとごっこ遊びとかしてましたね。『もののけ姫』(監督:宮崎駿)でサンがアシタカに干し肉?を食べさせるシーンの真似をしたくて、食パンにコーヒー牛乳をひたしたものを干し肉に見立てて「噛めッ!!」とか言ってました。普通によく噛めました。初めて読んだマンガは、『犬夜叉』(高橋留美子/小学館)か『らんま1/2』(同)だった気がします。多分…。
――― 『北北西に曇と往け』、先生は同人誌で北欧を舞台にされたマンガを描かれていますね。北欧に感じている魅力ポイントを教えてください!
同人誌まで知ってくださっているとは…ありがとうございます。北欧、特にアイスランドが大好きです。一面の苔の大地、黒い砂浜に灰色の空、火山に覆いかぶさる氷河など、荒涼としていて少し翳りのあるような空気感を持つ大自然に魅力を感じています。エルフやトロールなどの妖精の伝説が根強いのも魅力的です。妖精について学ぶ妖精学校なんてのもあるそうですよ。…とは言えまだ足を踏み入れたことはないので、生きてるうちに行きたいと思っています。物価が激高なのだけ怖い。
――― 先生の作画環境を教えてください。
今はオールデジタルです。液タブでWacom Cintiq Pro 16を使ってます。去年の始めくらいまでは、まだアナログで作画をしていたのですが(仕上げはデジタル)ふと思い立ってペンタブにして、それから間もなく液タブにして…と言う感じで、約一年の間でだいぶ変わりました。めちゃくちゃ絵の修正をする人間なので、修正液まみれにならなくなったのがありがたいです。書き味が恋しくなるのでたまに鉛筆でも描いてます。
――― マンガに限らず、これまでにハマってきたもの、今ハマっているものがあったら教えてください!
最近はゲーム実況やVtuberにハマっています。「ナポリの男たち」「にじさんじ」が特に好きで、作業中などに聴いています。とても楽しいので是非一度聴いてみてほしいです。基本的に多趣味なので、常にいろんなものにハマっています。
――― 最後になりますがこれから『好きな子がめがねを忘れた』に触れる読者の方に一言お願いいたします。
まだまだ拙いところの多い漫画ですが、少しでも笑っていただけたり、ときめいていただけたりすると嬉しいです。小村くんと三重さんをどうぞよろしくお願いします。